フィリピンは、2024年10月時点で日本を含む44か国と二国間の租税条約を締結しており、特に経済的・人的交流の多い地域を中心に幅広くカバーしています。本記事では、租税条約の概要を簡単に紹介し、加えてフィリピンと日本の間で締結されている日比租税条約について、そのポイントと活用方法を中心に紹介します。
1. 税務条約の概要
租税条約の正式名称は「所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税の防止のための条約」ですが、あまりに名称が長すぎることから、一般的に租税条約と呼ばれます。租税条約には国際標準として「OECDモデル租税条約」が存在し、その国際標準をベースとしつつ、各国間での調整を経て二国間の租税条約が締結されています。OECDモデル租税条約には、主に以下の内容が盛り込まれており、二国間の健全な投資・経済交流の促進を目的としています。
2. 日比租税条約の概要
フィリピンと日本の間でも、1980年に日比租税条約が締結されました。その後、2008年の改定で配当・利息・ロイヤルティ に対する源泉税率が大幅に引き下げられ、現在に至ります。租税条約は、各国の国内法に優先して適用されることが原則であり、日比租税条約においても、日本・フィリピンの国内法に優先して日比租税条約が適用されます。日比租税条約の内容は多岐にわたりますが、実務上特に論点になりやすい事項について、以下にいくつか紹介します。なお、本記事は、日本企業がフィリピンに子会社を保有している場合や、フィリピンで事業を行う場合を前提とした説明となります。
1) 軽減税率(限度税率)
フィリピン法人が日本企業に対して配当金や利息等を支払う場合、それらの金額に対してフィリピン側で最終源泉税が課されます。この最終源泉税の税率は取引の種類により異なります。また、日比租税条約においては、最終源泉税の軽減税率(限度税率)が以下のとおり定められています。限度税率とは、源泉地国が徴収できる最大の税率を意味します。つまり、源泉地国であるフィリピンでは、その限度税率を超える課税が認められていないため、一般的には軽減税率として解釈されています。
2) 恒久的施設の定義
恒久的施設とは、事業を行うための一定の場所や代理人のことを指します。恒久的施設が存在することにより、例えば日本企業で言うとフィリピンに事業拠点を設けていると見なされ、その活用により生じる所得に対してフィリピン側が課税権を持つことになります。日比租税条約の第5条には恒久的施設の定義が規定されており、具体的には以下が例示されています。
(a) 店舗 その他の販売所
(b) 支店
(c) 事務所
(d) 工場
(e) 作業場
(f) 倉庫
(g) 鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所
また第5条第4項に、次の事項は恒久的施設に含まれないことが規定されています。つまり、以下事項の範囲内の活動であれば、仮に駐在員事務所等をフィリピンに有していたとしても、恒久的施設には該当しないことになります。
(a) 企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。
(b) 企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。
(c) 企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。
(d) 企業のために、物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
(e) 企業のために、その他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
(f) (a) から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。ただし、当該一定の場所におけるこのような組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。
コメントを残す